ビバンダムは言わずと知れたミシュラン社のマスコットです。
頭からつま先までタイヤの輪っかでできた樽型体型が特徴。樽型でも敏捷性に優れていそうな所はさすがタイヤメーカーのマスコットですね。 ミシュランガイドの東京版が発売されて以来、本屋のポスターでも頻繁にビバンダムを見かけるようになりました。
以前、街の中でダウンジャケットにより必要以上に着ぶくれた人を見るたび、意地の悪いわたくしは密かに心の中で「ビバンダム」もしくは愛着をこめて「ビブ」とつぶやいていました。
ところが数年前からその比喩が必ずしも当てはまらなくなってきました。本家ビブの体型に異変が起きたからです。ダイエットにでも成功したのかスリムになって、顔もどことなくお目目ぱっちりの可愛い感じになってしまいました。
「なってしまいました」と書くのは、これまでの個性的なビバンダムの容姿にとても愛着を感じていたので、今のビブがまるで別のキャラクターのように見えるのです。私が「ビブ」呼んできたのは肉厚で頼もしく、お調子者で憎めなさそうなタイプ。なので、ソフトで愛くるしい姿、さらに女性にまでモテそうな風貌の新生ビブにはどうしても馴染めずにるのです。
お願いです、ミシュラン様。これ以上ビブをスマートにしないでください。
美食に樽腹はつきもの。ビバンダムをスリム化させるのは、フレンチより圧倒的に脂肪分の少ない料理文化を持つ日本市場にレッドガイドを根付かせるための戦略なのでしょうか。ガイドの帯に印刷された洗練されたビブを見ていると、「美食三昧でも体系維持はお忘れなく」という新時代のメッセージのようにも読み取れます。
だとすればその戦略は、ちょっと逆の方向を向いているような気が。食に関して時代はむしろ肉食系。この世知辛い世の中、ダイエットで手に入れる美よりも、食べ物がもたらす幸福感のほうが重きをなしているように感じるのです。
ぽっちゃり系のタレントや、樽ドル(樽腹のグラビアアイドル)まで活躍する時代ですから。
それにマスコットに関しては、少しばかり異形であって、絵描き歌で書けそうな大味なデザインのほうが親しみが湧くものです。写実化が過ぎたり、美形過ぎるキャラはつっこみどころがなく印象も薄いような。
とまあ、ずいぶん勝手な私見を書き連ねましたが、3月4日はミシュラン・レッドガイドのフランス版発売日でした。新規に3つ星を獲得したのはオード県、フォンジュンクーズにある「オーベルジュ・デュ・ヴュー・ピュイ」1軒のみ。
早くもシェフのインタビューがテレビで流れています。来週以降は各地の観光局から「おらが地方の星自慢」がリリースとして届くでしょう。
さて、私が最近ミシュランに注目しているのは星付レストランの情報よりもミシュランの広報姿勢です。総責任者がジャン・リュック・ナレになってから、これまでベールに包まれてきた覆面調査員の評価法や人物像が積極的にメディアに公開されるようになりました。ミシュランのHPに「覆面調査員ってどんな人」というコーナーができたり、覆面調査員のインタビューが雑誌に掲載されたりもしています。
クーリエ・ジャポン3月号掲載の「覆面調査員とランチを食べてみた」は文句なしの面白さでした。アメリカの一覆面調査員がどのようにミシュラン社に採用され、訓練を受け、実戦に赴くのか。店ではどんなメニューを選ぶのか。日頃の生活ぶりなども話しています。ビバンダムの着ぐるみから出てくる調査員の挿絵もまた秀逸。まだ本屋の店頭に並んでいるようでしたらぜひ手にとってみてください。3月号にはボルドーとトゥールーズの食紀行も掲載されています。このボルドー編は、有名ビストロ店のオーナーにして地元の名士であるジャン=ピエール・シラダキが自慢の樽腹にかけて、記者を一晩中市内のレストラン・酒屋を連れまわし手厚く(手荒く?)歓待するというお話。樽腹から日仏食文化の違いを考えるという抱腹絶倒のルポルタージュでした。
フランソワ・ラブレーの国、食の話題はまだまだ尽きません。最後にフランス4都市のスペシャリティを取り上げたルポルタージュをご紹介しましょう。雑誌REAL Nikkei Styleとの連動企画によるウェブサイトWagamagaでは、リールXゴーフル、ミュールーズXシュークルート、レンヌXガレット、ニームXオリーブオイルの組み合わせでフランス地方の食の豊かさが語られています。
さあさ、節制など忘れてフランス美食の旅へBon appetit !
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